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【総合監修】神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科 部長 坂井 信幸 先生
    【監修】先端医療センター病院 脳内管内治療科 医長 坂井 千秋 先生


現在地はトップの中のドクターコラムの中のVol.2脳動脈瘤に対するコイル塞栓術です。


Vol.2 脳動脈瘤に対するコイル塞栓術

一般財団法人広南会
広南病院血管内脳神経外科 部長
松本 康史 先生

くも膜下出血とは

脳卒中には虚血性脳卒中と出血性脳卒中があります。虚血性脳卒中の代表が「脳梗塞」で、出血性脳卒中の代表は「脳出血」と「くも膜下出血」です。くも膜下出血は脳卒中の中でも重篤な疾患です。現在の医療水準でも、くも膜下出血を発症してしまうと、死亡もしくは重度障害という結果になる可能性は約40%に達するとも言われています。

くも膜下出血の症状

くも膜下出血の症状は非常に特徴的です。くも膜下出血を発症したときの典型的な症状は、激しい頭痛や意識障害です。「バットやかなづちで殴られたような」「頭が割られたような」と表現されることの多い、経験した事のないような激しい頭痛が突然におこります。意識障害を伴う病気は他にも多くありますが、患者さんが意識を失う直前に「痛い!」と言った場合などはくも膜下出血の可能性が高いと考えられます。

くも膜下出血の怖い特徴は、元気に生活していた人が、なんの前触れもなく発症することです。そうなりたくないと考え、破裂する前に脳ドックなどで動脈瘤を見つけ、予防的に手術をすることもあります。これについてはVol.1の「脳ドックの功罪」を参照してください。

くも膜下出血に対する脳動脈瘤コイル塞栓術

くも膜下出血の原因の大部分は脳動脈瘤破裂によるものです。正常な脳動脈は頑丈な壁を持っていますが、脳動脈瘤では頑丈な壁が失われ、薄い壁になっています。動脈瘤の薄い壁が血圧に抗しきれなくなると穴があいて破裂 (出血)し、くも膜下出血になってしまいます。

くも膜下出血の原因である脳動脈瘤の治療としては「開頭クリッピング術」が古くから行われてきましたが、1980年代ごろからは頭を切らずに血管の中から治療することができるようになっていて、「脳動脈瘤コイル塞栓術」と言います。脳動脈瘤内に血液が入らなくなるようにコイルを密に詰め、破裂を防止する方法です。

脳動脈瘤

脳動脈瘤にプラチナコイルを詰めて、血液が入らないようにします。

プラチナコイルで動脈瘤に血液が入らなくなっています。これで破裂は防げるようになっています。

脳動脈瘤に対する治療法の選択

治療法の選択に際しては、開頭クリッピング術と脳動脈瘤塞栓術のそれぞれの立場から検討する必要があります。欧米において、破裂動脈瘤の再出血予防として、クリッピング術とコイル塞栓術を比較した大規模臨床試験ISATとBRADが行われました。治療1年後においては、コイル塞栓術のほうが障害を持たずに元気で過ごしている患者さんの数は多かったのですが、3~5年の長期的成績でみると、治療術による違いはありませんでした。そのため、患者さん一人ひとりの病状に合わせた最適な再出血予防の治療選択が必要と考えられています。また未破裂脳動脈瘤の予防的治療では、クリッピング術とコイル塞栓術をランダムに比較した大規模試験は行われておらず、動脈瘤ができた部位や合併症、症候の有無などによって患者さんごとに注意深く治療方針を決定する必要があります。

当院では開頭クリッピング術も脳動脈瘤塞栓術も、経験豊富なそれぞれの専門家が、脳動脈瘤の患者さん1人ひとりについての成功率と合併症率の見込みを率直に話し合って最善の治療法を選択するようにしています。

おわりに

脳動脈瘤コイル塞栓術は全ての脳動脈瘤に適している訳ではありません。逆に言うと、開頭クリッピング術が全ての脳動脈瘤に適している訳でもありません。 いずれの治療法も高い水準でおこなえる施設が増えていくことが望ましいと考えます。

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テルモは、グループ会社のMicroVention社と共に、くも膜下出血の予防に取り組んでいます。